149回目 湯液から診断法を間借する

カイロプラクティック体表医術の短所の1つといってよい。いまこの瞬間にAdj.を必要とする箇所を、みつけだす方法をもっていな。(Adj.は常に順番と位置を同時に満足させること)。各人それなりに工夫はしているものの、医術全体としは方法を持っていないといえる。*誰が来院しても同じことをおこなう者は論外。

今回は同じ体表医術といってよいのだろう、湯液から少し診断方法を間借りした。ただ両者には大きな歴史的長さという差はある。*間借り:その家の1室を借りること。

湯液の診断は主に舌/脈/腹を用いる。ただ寺師睦宋先生は診断(証の決定)は、第1に「観の目」でおこなうと言っていた。診療室のドアーを開けた瞬間/歩き方/姿勢/しゃべり方/症状等を聞く。舌/脈/腹をみるのは診断(証の決定)の確証をえるためだと。

我々のような浅学菲才の者には及びもつかない「観の目」。先生からは「身体60兆個の細胞に師の教え1つ1つを焼き付けろとも」おそわった。私はこのとき物事を学ぶという精神を、初めて教わった気がした。*身体の細胞数は現在、37兆個と言われている。

先生の言葉を思い出すたびに、どのようにカイロプラクティック体表医術の身体観察(Adj.位置の選定/確定)に工夫をこらせばよいか考え続けないわけにはいかない。

❖物理用語への変換。私の専門は身体構造だと信じている。物理的分野にはいる。そこで湯液の化学的用語を自分の頭で理解できる程度に、物理用語へ変換を心みた。

何故か?ザックリいって生物は物理的には圧力/温度/体積から成る。これに外部因子例えば、重力/明暗/放射線等がくわわる。*内/外の境界膜は必須。

圧力/温度/体積の3つはそれぞれ独立をしているようにみえるが、重なっている部分もある(数学ではベン図という)。その重なっている部分には当然、メジャー/マイナーの概念も働く。

❖私なりに脈/舌/腹に圧力/温度/体積の概念をあてはめてみた。あくまでも私なりにだ。

舌→温度:発生は内胚葉。

脈→圧力。古典ではよく「動」という言葉がつかわれる。機器の何もない歴史上での「動」は1つしかない。心臓脈管系だ。中胚葉発生になる。

腹→体積。ここは寺師先生の師、大塚敬節先生の論考を参考にした。先生は1千年以上にわたる色々な腹診に関する書物を検証し、次のような結論をだしている。「いまだ統一せられた定説なし。今後の研究しなければならない問題が残された」と。

腹診→とつ然、ボクシング的言い方になる。Adj.進行過程をボクシングのラウンドにたとえた。

腹部は第1ラウンドでは四肢あるいは頭部の影響を考慮すべきだ。ハッキリいえば第1ラウンドでは腹部/脈反応はとらえることはできない。私の臨床からはそうみえる。

第2ラウンド:腹部・脈/四肢・頭部との関連性は少しづつ明確になってくる。腹部/脈の反応をとらえはじめられる。逆に言えば、腹/脈の反応をとらえられることができるようになったということは、第2ラウンドにAdj.は進行したと考えてよい。

第1/第2ラウンドの変わり目は、「ここら第2ラウンド」だというような切れ目はない。何となく「変わったのかな」という感じだ。とらえられる脈反応は三部九候だけ。

頭部は歯科通院歴が3~4週間以内であるなら、その影響を意識した方がよい→Adj.を必要とする場合もでてくる。

注意点として。反応は横一線で第2ラウンドに進むというのではない。ある部分は進み、ある分は第1ラウンドのままのものもある。また1か所をAdj.すれば進行は第2ラウンドに進めるというものでもない。ほかのラウンドも同様だ。すべてのラウンドには幾つかのサブユニット(ここではAdj.対象部を意味する)を含む。各ラウンドにおけるすべてのサブユニットを満足させなければ進行は第1→2→3→4—–→とはすすめない。

Adj.の進行が第3ラウンドまですすむと、身体は姿勢変換を要求してくる:仰臥位/腹臥位/立位/(側臥位)等への要求がおきる。なかなか手ごわい。要求姿勢に正確に応じ、その姿勢で脈/腹をみてAdj.を進行させる。

第4ラウンドではその施術者のすべての能力をAdj.にかたむける必要がある。Ramdomnessの世界がひろがる。不謹慎な言い方になるが、体表医術者として楽しさ/喜びに満たされる瞬間でもある。

第5ラウンド。私はここから先にあるのが化学反応だと思っている。もし私が湯液の医術者として「証モドキ」をたてるとしたら、第5ラウンドに10日かける。この間に2~3回ほどAdj.をおこなう。10日たっても消えない腹部/脈反応がでていれば、それは物理的影響下の反応ではないと判断。化学反応だろうと考える。湯液では臓腑論に精神状態をまぜている。化学反応=精神反応になる。

第1~第4ラウンドのあいだでは脈診:六部定位の反応は、とらえることはできない。ただ姿勢変換をおこなえば反応はでてくる。時代劇でみるようなカタチでは、六部定位は第5ラウンド以後の課題になるのでは?

「本日のAdj.」終了後は、仰臥位/腹臥位/立位で同一の任意の幹音をしめすこと→音に重さはない。ハカリ/下げふり糸を立位姿勢が満足すること→ハカリ:身体左右の重さは等しい。下げふり糸:糸と背部正中線は一致。脚長も左右一致(解剖学的短脚長の者は除く)。脈:三部九候に反応なし。腹部反応なし。以上が私の臨床での物理的検査方法だ。身体側方からは、垂直を示すレイザー光で観察をする。*脈の反応なし:脈がないという意味ではない。拍動が正常を伝えているという意味だ。腹部の放射振動域は正常をしめす。

❖初めに湯液からの「間借り」とのべたのはどこのことか?腹部/脈反応を参考にしながらAdj.を正確にすすめていくことを意味する。Adj.が正確に行われたのであれば腹部/脈反応は「本日のAdj.」後、何も反応をしめさない→正常。

忘れてはいけないこと。上記物理的検査にはかならず合格するまで、「本日のAdj.」は続行してほしい。どんな理屈をつけても途中でやめれば、「今日の臨床は、明日の臨床へはつながらない」。

❖大切なこと。腹部/脈反応は化学反応を投影しているという保証はない。物理反応がまじる→四肢/頭部からの影響を忘れるな。例えば第1ラウンドでは私のようなカイロプラクティック体表医術者には、物理反応優先のようにもみえる→真実は不明。

❖ブログ137回目:解剖学的短脚長に書いた。仰臥位・股関節屈曲状態での脚長検査は、大塚先生の論考をみても分かるとおり、難しいことが予想される→腹診は「いまだ統一せられた定説なし」。 

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